それは麻薬のような愛だった
所謂セフレというやつなのだろう。
高校に入り、初のブレザーに身を包みながら雫はぼんやりと思った。
はっきりと伊澄から明言された訳ではないが、いつも伊澄から求められるのは交際相手の居ない時だった。
彼女がいる間は関わることなく、別れたら連絡がきて身体を重ね、また新しい彼女ができると一切の接点が失われる。
県内屈指の学力を誇る高校に入学しても、伊澄のモテっぷりは相変わらずだった。
黙っているだけで人が簡単に群がるし、入学して以降にできた彼女の数は2年の中頃には雫が知る限りでも両手の指では足らなくなっていた。それも毎度、伊澄からではなく女生徒の方から告白をするというのがまた脱帽だ。
雫の立場も変わらない。相変わらず誰からも気にかけられる事のない影の薄い存在であり、部活も趣味が高じて手芸部を選ぶなどここに来て地味を極めている。
ただ周りと違うといえば、学内屈指のモテ男である伊澄の幼馴染であり、彼の暇つぶしの相手であるという事くらいだ。
性欲処理の道具として扱われているなという感覚はあった。けれど月日を重ねるにつれ、次第に雫の感覚も麻痺していった。
昨日体を重ねたのに、翌日になると何事もなかったように隣に彼女を連れて歩く伊澄の姿を何度も目にしていくうち、いつしか「ああ、またか」と、当たり前のように受け入れるようになってしまっていた。