それは麻薬のような愛だった
「感極まるほどのこと?」
雫の潤んだ瞳を見て、颯人は初めて困ったように笑った。
「そこまで喜ばれると、それはそれで複雑なんだけど」
「う…ごめん…」
膝に手を乗せ体を小さくする雫に、颯人は背もたれに身を預けながら目配せをする。
「変わんないね、雫は」
「え、」
変わらないという言葉に動揺した。そんなはずはない。颯人と出会った頃はまだ今より希望に溢れていたし、好きかも分からない相手と何年もくだらない関係を続けるような不誠実な女じゃなかった。
他でもない颯人からの言葉に目を泳がせていると、颯人はゆっくりと続けた。
「目は合ってるのに、いつもどこか違うところを見ているようで…心が掴めない」
「……」
「けど昔の俺は、何故かどうしようもなく惹かれたんだよ」
颯人がそう言ったところでランチメニューが届く。雫の前にはナポリタン、颯人の前にはオムライスが置かれ、颯人はすぐにスプーンを手に取った。
「実際雫は可愛かったし、いつもにこにこしてて、そんな笑顔にも癒されてた。…俺のこと好きなんだろうなっていうのも、ちゃんと思えてはいたよ」
「思えて、《《は》》…?」
「雫さ、俺や山中さんと普通に話せてるってことは男性恐怖症とかそういうのではないんだろ?」
少しばかり逸らされた話に首を傾げながら頷く。それを確認すると、颯人は黙って掬い上げたオムライスを口に含み、再びスプーンを置いた。
「なら、原因は前の男か」
「っ!」