それは麻薬のような愛だった
どれほど眠ったのか、雫がふと目を開くと乱雑になっていた部屋は綺麗に片付けられていた。
伊澄の姿は部屋になく、もう帰ったのだろうかとゆっくりと起き上がりベッドから足を下ろす。
相変わらず胃の不快感は拭えないものの、伊澄の顔を見て安心したせいか今朝よりは少し動けるようになっていた。
「いっちゃん?」
声をかけれど、返事は無い。
けれど伊澄が持ってきたであろう上着やバッグ、何よりスマホがテーブルに置かれている事から帰宅したわけでは無いようだと判断した。
「…買い物にでも行ったのかな…」
喉の渇きを感じて冷蔵庫から炭酸水を取り出しコップに注ぐ。
妊娠を自覚する前から飲み物も水すら気持ち悪く、さっぱりとしたレモン風味の炭酸水なら飲めることを知ってから雫はそればかり飲んでいる。
そのままコップを持ち、ローテーブルの前に腰を下ろす。
見回せばかなり荒れていた部屋は元の姿を取り戻しており、後できちんとお礼を言わなければと思った。
「……」
静かな部屋の中、雫はゆっくりと机に顔を伏せた。