それは麻薬のような愛だった
「…いっちゃん、急に来てどうしたの?何かあった?」
「何かあったのはお前の方だろ。メッセージに既読もつかねえから様子見に来たんだよ。…いつから体調崩してた」
「…先週くらい、かな」
「なっ…」
思わず素直に言ってしまった言葉で先週の嘘が明るみになり、伊澄の顔は驚愕から怒気を孕んだものへと変わる。
それを見て、雫は誤魔化すように笑った。
「…ちょっと、風邪を拗らせちゃって」
思わず嘘をついてしまった。長年で染み付いてしまった伊澄に対して本音を隠す癖は、理性の働かない今の状態ではどうにも出来なかった。
当然伊澄は言葉通りに受け取り、熱を確認する為か雫の額に手を乗せて話しかけた。
「病院には行ったのか」
「…うん、行ったよ」
「薬は」
「…飲んだ」
そこまで言って、少しだけ伊澄の顔が少し安心して見えた気がした。
気持ちが弱っているせいだろうか、雫は自分を心配してくれる様子の伊澄にひどく縋りたくなってしまった。
「…いっちゃん」
「なんだ」
「ちょっとだけ…そのまま頭撫でてくれる?」
そう言うと、伊澄は躊躇うことなく手を移動させ優しく頭を撫でた。大きな手のひらに包まれる心地よさに、ほとんど眠れなかった雫に抗えない眠気が襲ってくる。
「片付けなんかは俺がやるから、寝てろ」
「うん…ありがと…」
微睡の中そう言い、間も無く雫は静かに寝息を立てながら眠りについた。