それは麻薬のような愛だった
同窓会が終わると同時に雫を追いかけ、その背中に声をかけた。
「久しぶりだね、いっちゃん」
雫の声で子供っぽいあだ名を呼ばれた時、自身の中で乾いた土に水が浸透するように満たされるものを感じた。
嫌がっているのを知りつつも強引に車に押し込み、夜に会う約束をこじつけた。
はやる気持ちに目を背けながら時間の少し前に迎えに行けばラフな服に着替えた雫が出てきて、特別センスが良いわけでもないその素朴な姿に、心躍るものを感じた。
話す時間すら惜しくホテルの部屋に入るなり小さな唇にキスを落とせばそこからはタガが外れたようにみっともなくがっついていた。
一瞬雫が抵抗したような気がしたが、時々漏れ出る甘い声を聞いてしまっては、配慮なんてものはとうに消え失せていた。
そして欲のままに事が終われば雫はシャワーを浴びたいと言い残し、早々に浴室へ消えていった。
「嘘だろ…」
柄にもなくベッドに突っ伏して頭を抱えた。
翻弄するのは自分だったはずだ。
だというのになんだこの体たらくは。
深いため息を吐き、伊澄は自身の頭を掻きむしった。
まさか自分が、雫を好きだとでもいうのか。そもそも好きってなんだ。
「…クソッ…!」
自分に好きだと言ってきた女達を思い浮かべては気色が悪いと吐き捨てた。
自分を好いているのは雫の方だ。現に結局最後まで抵抗しなかった。だというのに伊澄は、妙に満たされた気持ちに支配されていた。
こんな事は一度も無かった。
高校時代に雫を抱いていた時でさえ、一度も。