それは麻薬のような愛だった
ただの幼馴染だったはずだ。偶々母親同士の仲がよく、家が近く、物心がつく頃から当たり前のようにそばに居た。それ以上でも以下でもない、周りと何一つだって変わらない存在。
なのに何故、こうも雫の面影ばかり追いかけてしまうのか。
「——いっちゃん、起きてる?」
ふとかけられた声に一瞬たじろぎ、平静を装って顔を上げればバスローブに身を包んだ雫が伊澄を覗き込んでいた。
「お風呂空いたからいっちゃんも入るかと思って声かけたけど…ごめんね、起こしちゃったかな」
そう言って笑う雫に何か違和感を感じた。いつもと変わらない笑顔のはずなのに、何かが違う。
「…寝る」
だが気付かないフリをした。
これ以上掻き乱されるのは気に障る。
雫もそれ以上は声をかけてはこなかった。
今思えば、この時にきちんと向き合っていれば雫をあそこまで傷つける事はなかったのだろう。
そう後悔したところで、既に全てが遅かった。
その事実を痛感したのはその半年後、再び地元に戻った時だった。