それは麻薬のような愛だった
当然のことながら自ら望んで帰ってきた訳ではなく、従姉妹の結婚式に参加する為、親族の義務として戻ってきた。
「仁科、おめでとう!」
「日菜子綺麗だよ〜!お幸せにね!」
そうあちこちで声が上がるも、結婚式は本当につまらないもので、興味の欠片も無い伊澄には異様に時間が長く感じた。
親族席で両親の隣に座りひたすらに時間が過ぎるのを待っていると、伯父と伯母、それと新婦の妹にあたるもう一人の従姉妹がテーブルに挨拶に来た。
「今日はうちの娘の為にわざわざ来てくれてありがとう」
「こちらこそ。日菜子ちゃんの幸せそうな顔が見れて嬉しかったわ!」
社交的な母は伯母達と挨拶を交わして会話を弾ませ、伊澄がそれらを聞き流しているうちにいつの間にか話題は新婦の話に移っていた。
「前の男と別れた時にあまりに落ち込むから、一時は本当にどうなるかと思ったわ」
真横で話しているので否が応でも話が耳に入る。しかし伊澄は伯母の心底安心した声を聞きながらも、そちらに目を向けることなく黙って座っていた。
「あら、そんな酷い別れ方だったの?」
「5年近く付き合って結婚目前って時に急に浮気が発覚してね。もう私、心配で心配で」
「あらそう…けど、良い旦那さんとも会えたし、なんとか立ち直ってくれて良かったわね」
伊澄の母親がそう言うや否や、傍らに立っていた従姉妹の那月がぐっと身を乗り出して話題に割り込んだ。