それは麻薬のような愛だった


声に出さずに決意を決めた時、突然伊澄に腕を掴まれ無理矢理顔を上げさせられた。

伊澄の手からこぼれ落ちたスマホが床に叩きつけられ、ガシャン!という音が静かな部屋に鳴り響いた。


「一番だの、他の女だの…お前、さっきから一体何を言ってるんだよ」

「…え?」


伊澄の顔は先程とは打って変わり、眉間にはこれでもかと言う程皺が寄り凶悪な顔へと変貌していた。

伊澄の圧に負け、雫は思わず身を引き視線を泳がせる。


「…えっと、だからいっちゃんには、他に付き合ってる女の人がいるんだよね…?」


だからそれがもう我慢できないんだと続けようとしたが、それは伊澄の鋭い声にかき消されてしまった。


「…っ、いねーわ!ずっとお前だけだわ!」


突然声を張り上げた伊澄に雫は驚き体を跳ねさせる。その驚愕のあまり、またも伊澄の言葉をすぐに理解出来なくなってしまった。


「同窓会の後から全部切った。そっからはずっとお前一人なんだよ!」

「……。え?」


あまりの剣幕に気圧され、雫の頭の中はハテナマークで埋め尽くされていた。自身の言葉を全く理解できていない雫の様子に、伊澄は頭を押さえて息を吐く。


「フラれるだろうってビビってちゃんと言わなかった俺が悪いが…まさか本当に、欠片も意識されてなかったとは…」

「…え?え?なに、どういう…」

「これだけ連絡入れて、クソ忙しい中無理やり時間作って会いに来てんだぞ。…少しくらいは察するもんかと…」

「ちょ、え?何言って…」

「…いや、元を糺せば俺の素行が原因だし雫がそう思うのも当然か…?けど言うに事欠いて他の女って…また俺がそれらしい事やらかしてたのか…?」

「え?いや、だって…ま、待って待って!」


あまりの話の噛み合わなさに、そうだと言わんばかりに雫は床に落ちたスマホを拾い上げ、サイドボタンを押して画面を突き出した。


「だってこれ、昨日は楽しかったって…」


勝手に覗き見たことを棚に上げながら画面を差し出し押しつけると、眉を顰めながらそれを見る。

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