それは麻薬のような愛だった
不安に塗れた伊澄の目が雫を捉える。
伊澄は気持ち悪いと言ったけれど、雫はそうは思わなかった。あの頃の事を全て蔑ろにされていたわけではないと知り、ただただ嬉しかった。
——けど…
まだ大きな問題が残っている。
妊娠の事を告げるのは、何よりも不安だった。
雫には誓って後ろめたい事は何もないが、信じてもらえるのか分からない。気持ちを伝えないまま体を重ね続けた上、実際合コンにまで行っているのだ、疑われても仕方がない。
「……」
何度も言おうとしては言い淀む。そんな雫の様子を見て、伊澄は繋いでいた手を離し静かに問いかける。
「…抱き締めても、いいか?」
どこまでも優しい問いかけに雫は静かに頷いた。ゆっくりと背中に手を回され、伊澄の胸に押し付けられる。
触れ合いなど今更で何でもないのに、伝わる鼓動はあり得ない程に早く、雫を好きだと言った伊澄の言葉が嘘ではないのだと信じられた。
「…言いたい事があるなら言ってくれ。罵倒でもなんでも、全部受け止める」
「…っ、」
「お前に何を言われようが気持ちは変わらねえ。…俺は、どんなお前だって好きでい続ける。だから、言ってくれ」
「……いっちゃ…」
再び涙が落ちる。
不安は消えない。けれどもしかしたら、今の伊澄なら、信じてくれるかもしれない。
「いっちゃん…あのね、」
震える声で顔を上げれば、見た事も無いほどの優しい目で見つめられ、また言葉を詰まらせてしまった。
「私…妊娠…したの」