それは麻薬のような愛だった
「せめて日付くらいは書いてよ」
「嫌いなんだよコレ」
「だとしても、テストの日は比較的書くの楽でしょ」
その言葉を伊澄は華麗にスルーし、既に話を聞く気がないのか机に顔を突っ伏している。
すっかり人気のなくなったクラスの中には伊澄と2人だけ。たまたま残っていたのが自分だけだったから白羽の矢が立ったのだとしたら、なんとも運が悪い。
雫もそれなりにテスト疲れが溜まっているのでこの際サッサと書き終えて帰ってしまおうとシャーペンを握った。黙々と書き進めていると「なあ」と声がかけられた。
「お前、今もなんか作ってんの」
「え?…ああ、うん。一応手芸部だしね」
今も。その言葉で昔伊澄にプレゼントでマフラーをあげた事を思い出す。初めて作ったものだったから下手で今となっては見れたものではないけれど、しばらくの間律儀に使ってくれていた。
おそらくは彼の母親に言われての事だろうが、それでも嬉しかった記憶が今も残っている。
「逆にいっちゃんはもうサッカーやめちゃったんだね」
「まあな。別にプロになりたかった訳じゃねえし」
「そっか」
再び沈黙が落ちる。日誌を半分ほど書き終えたところで雫はふと手を止めた。
「私残り書いとくから、いっちゃんは遊びに行ってきていいよ」
日誌如きに無駄に2人も要らないんじゃないか。そう思って言ったのだが伊澄は「行かねえよ」と素っ気なく返した。