それは麻薬のような愛だった
「しつこかったから適当に返しただけで、元々行くつもりはハナから無かった」
「そうなんだ…」
視線を寄越さず書き進めていれば、日誌を押さえつけていた手に伊澄のそれが重なる。見上げれば、伊澄は顔を上げて真っ直ぐに雫を見ていた。
「お前、今日部活は」
その質問に一瞬だけ息を呑み、首を振る。
「今日は無いよ」
「ならこのあと俺ん家な」
あっさりと言われた台詞に眉を下げる。
「…彼女は?」
「今はいねえ」
「…そう」
再び視線を下げればそれを阻むかのように顔に触れられた。頬をなぞり、顎を掴む。そのまま流れるように唇が重ねられた。
学校の中という事もあってか触れるだけのキスはすぐに離れ、伊澄はそのまま雫の手元にある日誌を抜き去る。それに乱雑に何かを書き込んだかと思うとパタンと閉じた。
「担任に渡してくる。雫は門で待ってろ」
雫の返事も聞かずに伊澄は教室を出て行った。彼の中では決定事項で、断られるとは思いもしていない。事実、雫にも毛頭そのつもりは無かった。