それは麻薬のような愛だった
「ど、どうしたの?」
どういった感情での顔なのか掴めず尋ねれば、伊澄はそのままの表情で答える。
「雫お前…いい加減俺に甘すぎないか」
「え?」
「散々クソみてえなことしてきた男だぞ。そんな簡単に許すみたいな事言って良いのかよ」
「…迷惑だったかな?」
「な訳あるか。こちとら人生最大級に舞い上がってんだよ」
本当にそう思っているのかと問いたくなるくらい、伊澄は眉間に皺を寄せていた。その顔にいつもの伊澄が戻ってきたようで可笑しくなり、雫は思わず笑ってしまった。
雫の笑顔を見ると伊澄は途端に眉の皺を伸ばし、これ以上無いほどに顔を綻ばせた。そのまま手を伸ばすと、雫の顔に落ちた髪をそっと耳にかけた。
「いいのか、本当に」
「…うん」
伊澄の問いかけに、雫は迷う事なく返事を返した。耳に触れる伊澄の手を取り頬に当てれば、大きな手の温もりに心地の良い気持ちに包まれる。
「だって、どうしようもないくらい好きなんだもん」
伊澄への思いは、決して恋なんかじゃ無かった。
自分勝手で醜くて、ボロボロになろうが足掻いて求めて、どうしても手放せなくて。
まるで中毒だと、雫は思った。
ならばこの気持ちはどう言えばいいのだろう。そう思った時、雫は似たような感覚を思い出した。
伊澄への思い程ではないものの、依存性があって、ダメだと分かっていても欲してしまうもの。
初めて煙草を手にした時から、感じてしまう事。
いうならば、それは、麻薬のような愛だった。