それは麻薬のような愛だった
毎度のことだ。雫に声がかかるのはいつも伊澄がフリーの間だけ。その時だけは伊澄は雫を見てくれる。
馬鹿になっている事など分かっていた。けれど今更拒絶する術も知らなければ、元よりそうしたいとも思っていなかった。
束の間でも、体だけでも伊澄が自分のものになってくれるならそれだけで嬉しかった。
伊澄はそもそも、誰にも執着しない。それは例え彼女であろうと同じこと。
それならば、すぐに飽きられる彼女というポディションを得るよりも、こうして定期的に求めてもらえる今の関係の方が雫にとってはずっと都合が良かった。
幼馴染だからとか、ただ単純に身体の相性が良かったのかとか、理由なんてものはどうでもいい。優越感とでもいえばいいのか、自分の中にこんな醜い感情があったのだと、自嘲すら覚えた。
けれど果たしてこんなものは、恋と呼べる代物なのだろうか。
いつまでも続けられるようなものじゃ無い。どこかで見切りをつけなければ壊れてしまう。そんな予感もあった。
「行くぞ」
校門前でぼんやりと考え事をしていた雫に声がかけられる。伊澄は雫の脇を通り過ぎ、そのまま前を歩き始めた。