それは麻薬のような愛だった
「あーくそ寒ィ」
白い息を吐きながら伊澄は不満を漏らす。ブレザーのポケットに手を突っ込んで身を縮める姿は酷く不機嫌そうだった。
「いっちゃん寒いの苦手だもんね」
「苦手じゃねえ。嫌いなだけだ」
どう違うんだろうと思いつつも雫は深くはつっこまない。横を並ぶ伊澄は一応マフラーはしているものの、それ以外の防寒具は身につけていなかった。
「カイロいる?」
「いらねえ。お前の分無くなるだろ」
「私は今そんなに寒くないから。セーターも着てるし」
「ふーん。…なら有り難く」
懐から出て差し出された手にカイロを乗せる。その手の冷たさに本当に寒そうだと雫は眉を下げた。
「手袋買ったら?」
「高々数ヶ月の為だけに買いに行くの怠い」
「なら、私作ってあげようか?」
少しだけ間が開き、伊澄の視線が雫へと流れる。