それは麻薬のような愛だった
「…雫、大丈夫か」
未だ痙攣の止まらない脚を撫でながら、伊澄は体を起こす。気遣わしげにかけられた声だったが、伊澄の顔は笑っていた。
目が合った瞬間、雫は両腕で顔を覆って全身を横向きに逸らした。
「わ、私、だめって言ったのに…!」
自分の体に何が起きたかなど、雫が1番分かっていた。伊澄の愛撫で達した事は何度もある。が、今日のように下を濡らすほど深く達したのは初めてだった。
もう一切合切何もかもが恥ずかしく伊澄に目を向けられないでいると、覆い被さるように抱きしめられ、頬にキスをされた。
「悪い、一回やってみたかった」
「そ、そんな興味本位みたいに…」
「…嫌だったか?」
伺うような声色に雫はぴたりと止まる。ゆっくりと顔を覆っていた腕を取り、伊澄を見上げた。
「…分かってて聞くの、ずるい…」
雫の答えに、伊澄は分かりやすく笑った。
自分が拒否しなかったことがそれほど嬉しいのかと思うと、簡単に絆されてしまうのだから我ながら伊澄に対しては本当に甘いと、痛感せざるを得なかった。
伊澄は再びキスを落とす。今度は唇に己をそれを重ね、そのまま華奢な体を抱きしめた。
「…雫だけなんだ。こんな気持ちになんのは」
「え…?」
「捨てられたくねえって思うのも、訳わかんなくなるくらい乱してえって思うのも、お前だけ」
伊澄の声が鼓膜から脳を溶かす。伊澄の顔は見えないのに雫には伊澄がどんな顔をしているのか分かる気がした。
そしてそれを思うと、再び涙がこぼれ落ちた。
「雫」
名前を呼ばれる頃には視界は歪み切っていて、顔を上げた伊澄の顔が見えなくなっていた。
「愛してる。今までも、これからも…ずっと」