それは麻薬のような愛だった
高校3年では成績優秀な生徒は選抜クラスに入る。伊澄は勿論のこと、地道に試験に取り組んできた雫も文系選抜に席をおき、再び同じクラスに在籍する事になった。
その頃から付き合い始めた伊澄の彼女は1年生で、学校一可愛いと噂の女子生徒。交際もいつもより長く半年以上続いた。
そんな2人が別れたと噂が回ったのは、11月に入った秋の色が顔を出し始めた頃。
受験生との交際はどうしたってそうでない側に我慢が強いられる。惜しみない愛情表現であったり固い絆でもあれば違うのだろうが、そのどちらもなければ、破局に至るのは最早必然だろう。
——受験生は大変だなあ…
雫も間違いなく高校3年生ではあるが、指定校推薦で10月には進学先が決まっているので呑気なものである。
そんな秋の夕方、今日は母が夜勤の日なので夕食の準備は必然的に雫がする事になっていた。冷蔵庫にあるものでカレーでも作ろうと思ったのだが、肝心のルウが無い事に途中で気付き、近所のスーパーまで赴きそれを買って帰路についていた。
夏が終わり、以前より早い時間に日が落ち暗くなりつつある黄昏時。
その時間はやけに小腹が減るもので、ルウの調達ついでに買ったチョコレート菓子を食べ歩きしていると、不意に背後から声をかけられた。
「おい、」
聞き慣れた声に振り返れば、声をかけてきたのは未だ制服を着た伊澄だった。