それは麻薬のような愛だった
「晩飯、食いに行ってもいいか?」
「え?」
唐突に言われ思わず問い返す。
「いいけど…おばさん達待ってるんじゃない?」
「うちのも夜勤。親父は当直」
「ああ、そうだったんだ」
「今から用意すんのもだりぃし、ついでに食わせてくれ」
雫の母と伊澄の母は同じ病院で看護師として働いており、彼の父親はそこで医師をしている。雫の父親は会社員だが、帰宅は遅くまず21時より早くに帰ってくることはない。
どうせ一人で食事をするくらいなら話し相手が居てもいい。そう思い了承を返した。
「カレーしか用意してないけど、文句言わないでね」
「言わねーよ」
言っているうちに家に到着し、伊澄を自宅へと上げる。リビングで待ってもらい、その間に再び鍋に火をかけ、温まったところで弱火にしてルウを入れた。
今更だが中辛で大丈夫だろうかと思いつつ皿に白米と共によそい、ダイニングテーブルへと並べる。
「いっちゃん、できたよ」
「ん、」
ソファでテキストを読み込んでいた伊澄に声をかける。すぐにそれを置くとテーブルの椅子に腰掛け「いただきます」とスプーンを手に取った。
「受験勉強は順調?」
自身の分の皿を置きながら、雫は伊澄へ話しかけた。
「ぼちぼち。お前こそどうなんたよ」
「あー…」
正直なところ、指定校推薦組は肩身が狭い。大っぴらに既に進学が決まっていると言えばやっかみを向けられる為、既に大学が決まっているなどと表立って言う者はまず居ない。
故に雫も、悩みはしたか例え伊澄が相手であろうと話さないことにした。