それは麻薬のような愛だった
それなのに。
いざ行為が進みベッドに押し倒されて颯人の手が胸に触れた瞬間——突如、猛烈な吐き気に襲われた。
「——っ!」
雫は口を塞いで勢いよく起き上がった。そのまま急いでトイレに駆け込み、胃の中のものを全て吐き出した。
——なんで…?
ハアハアと息を荒げながら、止めどなく襲ってくる吐き気に苦しみながら雫は混乱していた。
なんで。どうして。
颯人と一緒にいて幸せなのに。
ちゃんと好きなのに。
「…っ、う…!」
再び堪えきれない吐き気に襲われ、再び嘔吐する。
けれど思い返せば、これまで何度かキスをした後も、こうした違和感はいつもあった。
腹の中に燻る言いようのない気持ち悪さはあったけれど、ずっと見てみぬふりを続けてきた。
信じたくなかった。もうすっかり過去に出来たと思っていた。だが胸に颯人の手が触れた瞬間、脳裏に浮かんだのは——伊澄の顔だった。
「…っ、そんな、嫌…!」
声を出せば、また吐いた。もう吐くものがなくなって胃酸だけが出ても止まらなかった。
心配した颯人が救急車を呼んで病院へと運ばれ、そこで点滴を打たれながら遠のく意識の中、雫は涙を流しながら確信した。
もう自分は、誰にも抱かれる事は出来ないのだと。