それは麻薬のような愛だった
「今夜7時、迎えに来る」
やっぱりだ。
伊澄はまた繰り返そうとしているのか。
こちらから切ったのが余程癪に障ったのだろうか。確かにいつも主導権を握っていたのは伊澄だったからそう思ってもおかしくはない。
面倒だし断ろうかと思ったが、ふと考えてやめた。
「…分かった」
少しの沈黙の後、雫は静かに了承した。
車を降りてなけなしの礼を伝えてドアを閉めると、車はそのまま去っていく。
「……」
断らなかったのは、もちろん理由がある。
今の雫は男を受け入れられない。
それならそんな姿さえ見れば伊澄も雫に興味を失い、二度とこういった誘いを持ちかけてこなくなるだろうと思ったからだ。
車が見えなくなるまで見送った後、雫は家の中へ姿を消した。