それは麻薬のような愛だった
約束の午後7時。
母には友人とカラオケでオールすると伝えて家を出た。
特に反対される事なく家を出ると、昼間と同じ車が家の前で待っていた。
「待たせちゃった?」
「待ってない」
素っ気なく返して、伊澄はシフトレバーを切り替え発進させた。
どちらも声を発さない無言の車内の中、雫はチラリと伊澄を覗き見る。
高校の頃より少し伸びた髪を明るく染めた伊澄は、ますます色気を増した気がする。
身体も鍛えているのか長袖の服を着ていても整った体付きなのが見て取れる。
この男は一体どこまで育つのだろうと恐ろしくも感じた。
「……」
そしてやはり、そんな伊澄を見ても他人事のようにかっこいいなと思うだけでそれ以上は何も感じない。
——だとしたら、何故。