それは麻薬のような愛だった
伊澄の隣に腰を下ろし、葡萄に手を伸ばして口へ入れる。
すぐに甘酸っぱい美味しさが口の中に広がった。
幼い頃はそれにハマり一房ペロリと食べてしまうほど好物だった事もあってか、未だ母の中では雫は幼い子供のように思っているらしく家を出てから毎年この時期には大量の葡萄が送られてくる。
もう幼かったあの頃とは何もかもが違うというのに。
もう一つと手を伸ばそうとすると、影がかかり見れば伊澄の整った顔が目の前にきていた。
「…雫」
甘い声でそう囁き、そのまま唇を重ねる。
最初は軽く触れるだけだったそれは回を重ねる毎に熱量を帯び、ねじ込められるように舌を入れられ自身のそれと絡ませる。
キスは合図のようなものだ。
その後はそのまま後ろに押し倒されて肌にそっと触れてくる。
雫も応えるようにネクタイを解き、シャツのボタンをひとつずつ外していく。
露わになった鎖骨と筋肉は、より伊澄を扇情的に見せていた。