それは麻薬のような愛だった



早朝。伊澄より先に目が覚めた雫は隣に眠る伊澄を横目にベッドを抜け出し、散らばっていた服を適当に羽織ってベランダに出た。

手に持っていた箱から1本の煙草を取り出し、ライターで火をつけ煙を吐き出した。


「ふー…」


吸い始めたきっかけはいつだったか、確か今の事務所に入所して半年の頃だった。

仕事のストレスやら何やらで色々とキャパオーバーになり、どうしても自分の中で消化ができなくなった時、ふと手を伸ばしたのがキッカケだったと思う。

以降も落ち着きたい時などは吸っている。

仕事場では吸わないので非喫煙者だと思われているのだろう、偶にすごく気を遣われた時はいたたまれない気持ちになる。


「…風が気持ちいいなー…」


夏も終わりに入り、朝晩は気持ちのいい気温になってきた。

見上げれば晴天、綺麗な青空が広がっていた。

もう一度息を吐いた時、背後からカラカラと音がしてベランダに出てきた人物は雫の隣に立つなり口から煙草を奪い取った。


「あんま吸うなって言ったろ」


寝起きだというのにこの男のなんと美しいことか。
いつも鋭さを感じさせる切れ長の瞳は少し垂れており、開いた胸元からは色気が溢れていた。

免疫の無い女なら鼻血を出して卒倒しそうな姿だ。


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