それは麻薬のような愛だった
そんな家族をニコニコと見守る雫の横顔を見つめながら、伊澄が静かに尋ねた。
「…あんな風になりたいか」
「んー…どうだろう」
伊澄の問いに雫はのんびりとした口調で答える。
「私、結婚願望無いからなあ」
その言葉に驚いたのか、伊澄が珍しい顔を見せた。
「…は?」
「ちゃんと資格持ってるし、一人で暮らしていけるだけの生活力はあるからね。今からちゃんと貯金していってホームとかに入れれば老後も心配ないかなって」
税理士という資格を持っている事もあり、その辺りは上手くやっていけるという自負もあった。
ありがたい事にこの現代社会、女性の独り身でも以前ほど生き辛いことにはならないだろう。
時代が進めばもっと理解が増えるかもしれない。
この際せっかくだから、もっと上の地位を目指してみてもいい。
何せ恋人もいなければ結婚もしない、仕事に費やせる時間と情熱だけはたくさんあるのだから。
そうしているうちに仲の良い家族は木の影で見えなくなってしまい、雫は前屈みになっていた体を少し起こした。
その時、ふわりと肩が暖かい温もりに包まれた。
顔を上げれば伊澄がブランケットを雫の肩にかけていた。
「…部屋戻るぞ」
そう言って雫の腰を抱きながら部屋の中へ誘導し、雫もそれに抵抗する事なく一緒に部屋の中に入っていった。