それは麻薬のような愛だった
その間に服を着替えを済ませてテーブルを拝借し、軽くメイクを施す。肩甲骨辺りまで伸びる髪は特に結えることはせず、簡単にアイロンを通すだけに留めた。
戻ってきた伊澄は一度寝室に入り、間も無くして着替えを終えて出てきた。
タートルネックの白のセーターに黒の細身のパンツを合わせ、グレーのロングコートを羽織った装いは至ってシンプルなのに伊澄が着るとスタイリッシュな雰囲気が際立つ。
また一段とかっこよくなったなと思いながら雫も立ち上がり「準備できたよ」と声をかけた。
「なら行くぞ」
言葉少なく返した伊澄に、雫も特に何も言うでもなく着いていく。
予定としてはこの後駅構内のカフェで軽い朝食を取ってから遊園地へ向かう予定だ。
早朝の人の少ない道を並んで歩き店に入り、雫はサンドイッチとハニーカフェオレを頼んで席に着いた。次いで席に着いた伊澄も似たようなもので、それだけで足りるのかと聞けば呆れた目を向けられた。
「どうせまた、季節限定のフードやら甘味やらを食べられもしねえのに買い漁るんだろ」
「…よく覚えてるね」
前回遊園地に行った時は今よりまだ伊澄といるのにぎごちなさを感じていた事もあり、やたらと食べ物を買って誤魔化したりしていた。
何せ激しい乗り物が苦手な雫が乗れるのは可愛らしい乗り物ばかりで、その隣で虚無顔でいられたらそうする他無かったのだ。