それは麻薬のような愛だった
「すごく嬉しい。いっちゃんと来てよかったぁ…」
雫はスマホを大事そうに抱えしみじみと言う。
成り行きで同行が決まったものの、舞い込んできた幸運にすっかり浮かれてしまっていた。
しばらくそうして悦に浸っていた雫だったが、ふと見上げると自身を見つめていた伊澄と目が合う。
しかし伊澄はすぐに目を逸らし、「パレードの時間はいいのか」と言った。伊澄の顔を不思議そうに見ていた雫だったが、その言葉にはっと我に返った。
「そうだった!教えてくれてありがとう、いっちゃん」
伊澄の横を通り過ぎてパレードが見られる通りに向かおうとする。しかし伊澄はその場に止まったまま動かず、雫は首を傾げた。
「どうしたの?」
「…いや、」
奇妙に思い尋ねるも伊澄は何かを言い淀み、結局何も言わずに静かに首を振るだけだった。