それは麻薬のような愛だった
「…あの時の事、覚えてないか」
「……」
伊澄の言葉を少しだけ考える。唐突に聞かれたところで何を聞きたいのかなんて普通は分からない。
けれど何故か雫には、伊澄があの冬の事を聞きたがっているのではないかと、そんな風に思えてやまなかった。
「あの時って、どの時のこと?」
「高2の期末後の事だ」
「……。さあ、何だったっけ?」
そう言いながら伊澄の横を通り抜けて中へ入る。
ホットカーペットの上に腰を下ろし、ブランケットをかけながら雫は伊澄に微笑みかけた。
「そんな事より入りなよ。ここあったかいよ」
正直な話、今更その話を持ちかけられても困る。
自分で選んできた事とはいえ、高校の頃のことはあまり思い出したくはない。
伊澄が何を言いたいのかは知らないけれど、今となっては終わった事だしどうでもいい。
事実、今こうしてセフレを続けているのだからそれが答えだ。仮に伊澄が罪悪感のようなものを抱いていたとしても、そんなものに意味はないし、必要も無い。
「いっちゃん?」
再度呼びかければ伊澄は窓を閉じ、カーテンも閉める。そのまま雫のいる位置まで移動して腰を落とすと、再びキスをした。