それは麻薬のような愛だった
「あ、はい。どうぞ」
先の自己紹介を振り返り、男の名前が山中だった事を思い出す。初対面で下の名前で呼ぶのは普段ならば違和感を覚えるが、今は合コン。それが適度な距離感なのだろうと納得する。
「雫ちゃんはいくつ?」
「今年で27になります」
「なら年下か。美波ちゃんと同じ税理士事務所って言ってたけど、同級生?」
「はい。同期です」
「そうなんだ。俺も何度か訪問の時に同席したけど、知らなかったなあ」
そう言って笑う山中に視線を向けたまま、雫はアルコールに手を伸ばす。
「山中さんは経理部でお勤めなんですか?」
「そう。今年で10年目だけどずっと経理の仕事してるね」
「そうですか」
そこで話題が止まり、どうしたものかと考える。
ほどほどに異性とは関わりはあったものの、こういった場には慣れておらず話題が見つからない。意識しているわけではなく、純粋に興味が向かない為話題が思いつかないのだ。
けれどあまりにそれを表に出して終えば美波の顔に泥を塗ることになる。居心地の悪さを感じて再びグラスを口に運べば、山中から声がかけられた。
「雫ちゃん、お酒強いの?」
些細な質問だが、それでも話題を振ってくれる事が雫にとっては有り難かった。