それは麻薬のような愛だった
「強い方だと思います。酔いはしますけど、記憶飛ばした事はないですね」
「はは、そこ正直に言っちゃうんだ」
楽しげに笑う山中に首を傾げる。山中もほどほどに強いのか、ビールはほぼ底をついているが顔色ひとつ変わらずグラスについた水滴を指で一筋撫でた。
「強いって言っちゃうと下心で強い酒飲ませてくる奴がいるから、気を付けないと」
「…はあ…そうなんですか…?」
「雫ちゃんってさ、こういう会は初めて?」
「そうですね。そういえば、お酒を入れる時はよく知った人としか行った事ないです」
「なるほどね。確かにそんな感じする」
どういう意味だろうと邪推する。小馬鹿にされているのか、初心だと思われているのか。どちらにせよ、全ての経験が浅い雫にはどういう態度でどう答えていいか分からなかった。
そんな雫に余裕の笑みを向けた山中は柔らかい口調で言う。
「けどまあ、安心してよ。大事な取引先の社員さんを潰してどうにかするような下世話な真似はしないから、好きに飲みな。…それに雫ちゃん、今日無理矢理連れてこられたんでしょ?」
「!?…え、えと、それは…」
あからさまに動揺を見せた雫に、山中は全く気分を害した様子も無く笑い声を上げた。
「はは!ちょっとカマかけただけなのに、そんな素直に反応されると揶揄いがいがあるな〜」
「えっ」
「面白い子だね、雫ちゃん」
「……」
雫は呆気に取られぽかんと山中を見つめる。その間に次のコース料理である海老とアボカドのアヒージョが運ばれ、目の前に置かれた。