それは麻薬のような愛だった
妙な居た堪れなさから残りの果実酒を飲み干し、喉を潤す。するとすぐにドリンクの書かれたメニュー表が差し出され、それを手にした山中は笑っていた。
「雫ちゃん、お酒は何が好き?」
いまいち何を考えているか分からない山中の真意を読みかねながらも、雫は正直にハイボールと答えた。
「そっか。ならここ、色んな種類置いてるみたいだよ。ジンジャーとかコークもいけるし。それにハイボールが好きならブランデーも好きなんじゃない?」
「そうですね。父が好きで休みにはよく晩酌に付き合ってます」
「いいね。俺も同じもの頼もうかな」
山中の言葉に「そうですか」と短い言葉を返した雫はメニュー表を眺め、よく飲む銘柄のブランデーを頼むことにした。
まだ2杯目ではあったし、せっかくならば美味しいお酒が飲みたい。それに多少酔ってテンションが上がれば、微妙に流れる気まずさも消せるのではと踏んでいた。
美波や他のメンバーも居るし、何より先程山中の言った取引先という言葉が大きな後押しになっていた。確かに酔っ払った女を持ち帰る男なんてのが取引先にいたら醜聞が過ぎる。
そういう事もありドリンクを決めて山中へ戻せば、気が利く男なのか他のメンバーにも声をかけて追加の注文をしていた。
悪い人ではないのだろうと、雫の数少ない男性経験からもなんとなくそう感じていた。実際山中は雫を面白いと表現しており、それ以外の含みは感じない。
何より、いくら社会人になって多少マシになったとはいえ、美波を始めとする綺麗な女性メンバーが居ながら地味を極める自分にターゲットを置くとは、雫には到底考えられなかった。
「雫、ちゃんと食べてる?」
ふと隣に座っていた美波から声がかけられ、視線を向ける。
「食べずに飲んでばっかりだと悪酔いするよ?ほら、アヒージョ美味しから食べてみて!」
言いながら取り分けられたアヒージョを差し出され、雫はお礼を述べながら皿を受け取った。