それは麻薬のような愛だった
——さっきのは、気のせい…?
あれから何杯もブランデーと日本酒を煽った雫はかなり酔っている。他人の側という事で理性を保っているが、気を抜けば意識が飛びそうな程に視界はふわふわとしていた。
だから見間違いで片付ける事にした。
伊澄から何度も電話がかけられていたなんて、そんな事あり得ない。
「すごいじゃん!クオリティ高っ」
「でしょう?長年の努力の賜物です」
謙遜する事なく自慢げに返す雫に笑い声が返る。
「次の衣装とか考えてんの?」
「やっと繁忙期が終わったのでぼちぼち始めようかと…。今までは忙し過ぎてデザインすら考える余裕無くて」
「分かるわ〜年度末と始めってバタバタするよね。あと俺、最近新しい子覚えられなくてそろそろヤバい」
「大きい企業ならそうなりますよね。私も人の顔と名前覚えるのは苦手なので気持ち分かります」
「はは!苦手でも俺の名前と顔くらいは覚えて帰ってよ?」
「あ、はい。…えっと、三田さんでしたっけ?」
「惜しい!三原ね、三原!」
名前を間違えたのをジョークだと思ったのか、はたまた酒の席でのご愛嬌なのか、三原はあっけらかんと笑い飛ばしてくれた。
改めて聞きはしたが覚えていられるかなと自信のなさを感じながら、雫は再びウイスキーの水割りに手を伸ばす。
やめておけばいいものを、久しぶりの美味しい酒と楽しい雰囲気に呑まれ雫は許容量以上のアルコールを体内に入れていた。
故にその交流会が終わる頃にはフラフラで、美波に支えてもらえなければ歩けない程に意識が覚束なくなっていた。