『ゴールデンゴール』
32

時の流れに身をまかすことにした。私があれこれ考えている間にも彼の手や
指は休むことなく私の胸をマッサージして(揉みしだいて)いる。 

私はなかなか胸で官能を受けることは少ないのだが、今日は夫以外の異性に
触れられいきなりの予期せぬ施術になっていること、道徳にはずれたことを
している少しの罪悪感、いうて、リラックスしているとはいえ多少の緊張感
を伴う……そんな 普段の生活からかけ離れた空間にいることなどで、興奮
度が高まった。



胸と彼の分身の両方に気を取られつい我を忘れ官能の波に飲まれそうに
なったその時……。


『えっ? あっ・・・あぁ~っ。うっうっうっ……』
いきなりの彼の何度もの抽挿に、壁に顔や身体が押し当てられそうになり、
身体の使える筋力全てで踏ん張ったため、快感とは別の声も出てしまい、
立ってするなんて初体験だったため、いろいろと大変だった。


堀内くんが精を吐き出したあとの清掃をタオルやペーパーで
丁寧にふき取ってくれる。

「お疲れ様。いいですか?」

と彼から訊かれ……私は頷いた。


すると、しばらく立ったままでハグをしてくれた。


「これで、最後にできますね。どうでしょう?」

「もう、ここへは来ません」

「それがいいです。僕はあなたの気持ちに添えましたでしょうか」

私は涙目でそっと『ありがとう』と言い、これまでのように身支度を整え、
支払いを済ませたあと、見送ってくれる堀内くんに別れを告げた。


母と娘の待つ家路に向かう電車の中で、何かがひとつ自分の中で
終わったと思った。

この夜の私は悲しんでもなく、また浮かれてもなかった。

ただ、ひとつ分かっていることがあった。

この先、自分はファッションマッサージなどの風俗に行くことは
ないだろうということ。


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