愛は花あられ
「え、、、本当に消したんですか?」
「うん。消したよ?さっき言ったじゃないか。」
わたしがお風呂に入っている間、女性と連絡を取っていたのかと思っていたけど、そうじゃなくて、女性の連絡先を消していたんだ。
「あ、それから!」
師道社長はそう言うと、一度スマホの画面を消し、自分のスマホをわたしに差し出した。
「えっ?」
「自由に見ていいよ。パスワードは"11020310"だよ。」
パスワードまで教えて、この人、、、本気なんだ。
ん?それに待って、、、そのパスワードの数字って、、、
「師道社長、、、そのパスワードの数字、、、」
「あ、気付いた?妃都の誕生日と入籍記念日を繋げてみたんだ。」
"11020310"
"1102"は、わたしの誕生日。
"0310"は、わたしたちの入籍日。
わたしは師道社長のスマホを手に取ってみたが、パスワードを入力しロックを解除する気にはなれなかった。
それを聞いただけで、師道社長の本気さが伝わってきたから。
「ありがとうございます。そこまでしていただけたなら、見る必要はありません。」
「じゃあ、俺のこと信じてくれる?」
「それはまだです。でも、、、師道社長の気持ちに応えられるよう、わたしも努力はしていきたいと思います。」
わたしがそう言うと、師道社長は優しく微笑み、それから顔を寄せてきた。
そしてわたしが片手の手のひらで師道社長の唇を阻止し、「それはまだダメです。」と言うと、師道社長は「えー、今そうゆう雰囲気じゃなかったぁ?」と言い肩を落としていた。
「でも、"まだ"ってことは、そのうち許してくれるって事だよね?楽しみにしてる。」
師道社長はそう言い、無邪気な少年のような微笑みを見せると「じゃあ、風呂入って来るね!」とソファーから立ち上がり、バスルームへと向かって行った。
スマホをわたしの隣に置いたままで。