歪んだ月が愛しくて2
親友
体育祭の練習を終えてグラウンドで皆と別れた後、俺と未空はその足で生徒会室に向かって歩いていた。
「あのさ、希って本当に大丈夫なの?」
「のんちゃん?」
そう切り出した俺を、未空はキョトンとした顔で見た。
「何でのんちゃん?もしかしてさっき頼稀が言ってたこと気にしてる?」
「そうじゃないけど、何か心配で…」
「………」
俺が心配することじゃないのは分かってる。
余計なお世話って言われればそれまでなんだが、でもやっぱり一抹の不安が拭えない。
「リカは優しいね」
「優しい?」
俺が?
「のんちゃんは大丈夫だよ。頼稀がついてるし、あの頼稀が大丈夫って言ってるんだから大丈夫だよ」
「………」
『大丈夫だ』
一瞬、王様の声と重なった。
やけに安心するんだよな、未空の声って。
「それにのんちゃんが部屋に篭もることは過去にも何度かあったし、本人に聞いても大丈夫しか言わないから正直確かめようがないんだよね。だから頼稀の言葉を信じるしかないんだ」
その言葉を聞いて、分かった。
未空も希のことを心配していた。
踏み込みたいのに踏み込めないことがもどかしくて、どうしていいか分からないんだ。
「のんちゃんはいつもニコニコしてて俺と違って空気が読める人だから、中々他人に弱いところを見せないんだ。多分頼稀にしか見せないと思う」
「……悔しい?」
「そんなことないよ。でも俺は友達だと思ってるから色々とぶちまけて欲しいとは思ってるけど。だって俺だけが友達だと思ってるのはちょっと寂しいじゃん」
ああ、未空は待ってるんだ。
希が自分から話してくれるのを。
「俺だけ、か…」
直接本人に聞くことも出来ず、頼稀に聞くのも何か違うと思いながらも、結局は消化出来ない想いを未空にぶち撒けてしまった。
全くどっちが優しいんだよ。俺なんかよりも未空の方がずっと希のことを考えているじゃないか。