歪んだ月が愛しくて2
「俺、いらないね」
「何かしたい」って気持ちが先走って、肝心な希の気持ちを考えていなかった。
自分のことしか考えられない薄汚い自分に反吐が出る。
「リカは、いらなくなんてないよ」
ギュッと、未空は俺の手を握る。
「リカは本当に優しいね」
「どこが?未空の方が優しいじゃん」
「優しいよ。だからのんちゃんのことが心配なんでしょう」
ニコッと、未空は優しく微笑む。
でもその優しさとは裏腹に、俺の手を握る未空の手は少し痛かった。
「リカは誰よりも優しくて、臆病で、友達想いだね」
(臆病…)
そんなこと、自分が一番よく分かってる。
踏み込みたいのに、踏み込めない。
信じたいのに、信じられない。
矛盾してるな、本当。
「ありがとう、のんちゃんのこと心配してくれて」
「別に、当然のことだし…」
「当然だと思うのは、のんちゃんや俺達のことを友達だと思ってくれてるからだよね。そんなリカをいらないって言う人は俺の友達にはいないよ」
未空はもう一度「ありがとう」と言って、俺の手に自分の手を絡めた。
「………ぃ……、の…」
「ん?」
ギュッと、その手を握る。
「俺が皆のこと、友達だと思っても、いいのかな…?」
皆のことを知りたいと思った時から、皆は俺の特別になった。
でもそれは俺だけが思っていれば良くて、だから一度だって友達だと聞き返したことはなかった。
逃げていたんだ。
臆病だから、聞き返せなった。
友達じゃないと、否定されることが怖かったから。
「違うの?」
「え、」
「俺はリカのこと親友だと思ってるけど」
それなのに未空はいつだって俺の欲しい言葉をくれる。
「そう思ってたのは、俺だけ?」
コテっと、未空は手と手を絡めたまま首を傾げて俺を見つめる。
……やっぱり、あざとい。
この確信犯め。
「リカ」
「………」
未空は待っていた。
俺の言葉を、俺の答えを。
「……俺、未空に酷いこと言った」
「酷いこと?」
「“頼る必要がない”って言ったから…」
「………」
『俺って、そんなに頼りない…?』
『誰かのことを知る前に、身近な奴のことをもっと知ってやってよ』
「俺は、自分のことしか考えてなかった」
優しくなんてない。
友達想いでもない。
もしそうであったら、あんな風に未空を突き放したりしない。
「あんな風に突き放して、未空が何て思うか考えもしなかった」
でも、もう偽らない。
この想いは本物だから。
優しくなくて、自分のことしか考えてなくて、未空が言うような友達想いな奴でもないけど、それでも傍にいたいと願ってしまった。
「ごめん」
こんな俺で、ごめん。
自分のことしか考えられない臆病者で、本当にごめんね。
でも傍にいたいんだ。
何れ訪れるかもしれない、終焉の日まで。
俺のことを「親友」と呼んでくれた大切な人と。