歪んだ月が愛しくて2



◇◇◇◇◇





深夜、大都市東都の裏路地を1人の少年が走っていた。
少年の身なりは所謂不良で、大きめなサイズのトレーナーに、太めのスケーターパンツを腰履きにしている。



少年は逃げていた。
相手は10人近いグループだった。
年齢も服装の感じも然程変わらない男達。
ただ一つの違和感は、全身真っ黒な服に身を包み、顔を隠すかのようなフードの隙間から見えた男達の髪がまるで老人のように真っ白だったこと。そして示し合わせたように全員同じ格好、同じ髪色をしていたことだった。
何かの宗教かと一瞬頭を過ったが、少年はすぐに首を振った。



そんな連中と遭遇したのは、今から30分ほど前のことだった。
少年は複数の友人達とゲーセンから出て来たところを囲まれて、近くの路地に引っ張り込まれた。



「テメー等、どこのもんだ?」



と、凄んだ途端。



「テメーが知る必要はねぇんだよ」



暗がりの中、フードを被った白い男達は不気味に笑った。



それから男達は一斉に襲い掛かって来た。
喧嘩は先手必勝が勝利の秘訣だが、少年も他の仲間達も、その圧倒的な強さに打つ術がなく、サンドバックのように殴られて蹴られ続けていた。



「がはっ!」

「ぐ、あぁあああ!!」



仲間達は次第に数を減らして地面に蹲る。
少年も痛みに悶えながら逃げようとするが、膝に力が入らない。
痛みよりも恐怖が勝ったのだ。



「た、助けてくれっ!」



精一杯の命乞い。
それで許しを乞えるとは思っていないが、だた迫り来る恐怖から言わずにはいられなかった。



そんな中、1人の白い男が少年を視界に捉えて口を開いた。



「お前は見逃してやる」



その言葉に、少年は目を見開く。
そして白い男は続けてこうも言った。



「覚えておけ。俺は―――」










それが今から30分前のことだった。


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