歪んだ月が愛しくて2
立夏Side
「ちょっと面貸せ」
「は?」
リレーの練習をした翌日。
頼稀は生徒会室に入って来るなり俺を見つけてそう言った。
一見喧嘩を売られているかのような台詞は主語がないせいでリアクションが取り辛い。
「えっと…」
「どう言うことだ?」
すると俺に代わって会長が声を上げた。
「俺は立夏と話してるんです。部外者は黙ってて下さい」
「あ?」
「事実でしょう」
何故か俺を挟んで睨み合う、会長と頼稀。
この間、平和的解決したはずなのに、何で顔を合わせる度に一悶着起こそうとするかな。見てるこっちは気が気じゃない。
「風魔さ、いきなり入って来るなりそれはないんじゃねぇの?りっちゃんのことに尊が口挟むのは生徒会長として当然だしよ」
「それに何故君がここに入って来れたのですか?中央棟への出入りは金バッチが必要なはずですが」
「そうそう。てか、リカに何の用?ここで話せばいいじゃん」
「用件があるのは俺じゃない」
頼稀じゃない?
……まさか。
「だったらそいつが直接来いよ。態々風魔を寄越して無駄に争うことねぇだろう」
「それは出来ない」
「何で?」
「何でもだ。それに連れて来て困るのはそっちだしな」
「……成程。そう言うことですか」
「は?どう言うことだよ?」
「何で九ちゃんだけ分かるの?俺にも教えてよ!」
「分かんなくていい。兎に角、俺は立夏に話があるんでそこを退いて下さい」
「………」
頼稀の言葉に会長は不機嫌そうに眉を顰めた。
「立夏」
痺れを切らした頼稀が俺の名前を呼ぶ。
そんな声で呼ばなくても分かってるよ。
俺が頼稀を拒むはずないだろう。
「俺、コーヒーが飲みたい」
「用意してある」
「じゃあ行く」
そう言って立ち上がると、未空は俺の腕にしがみ付いて来た。
「えー!リカ行っちゃうの!?」
「大丈夫。別にどこにも行かないよ。どうせ行き先は管理人室だし」
「管理人室?」
未空の手に自分の手を重ねてやんわりと未空の手を引き剥がす。
その間も俺は頼稀から視線を逸らさない。
頼稀が否定しないと言うことは、そう言うことなんだろう。