歪んだ月が愛しくて2



「いいか、テストの結果は3日後だ。分かってると思うが1階の下駄箱前に全学年の結果が貼り出されるからな。因みに貼り出されるのはトップからビリまでだ」

「なっ」



何だとぉおおおお!?



「ん、どうした立夏?いきなり立ち上がって何かあったのか?」



紀田先生は突然椅子から立ち上がった俺を見てニヤニヤとムカつく笑みを浮かべる。



(この野郎、ムカつく顔しやがって…)



やっぱりこの人は正真正銘文月さんの友達だ。類は友を呼ぶって言うし。



「いつまで突っ立ってんだよ。質問か?」



質問したいことは沢山ある。
でも今言いたいことは質問ではなく抗議だ。



「ちょっと紀田ちゃん!それはないよ!俺に死ねってこと!?」



すると俺よりも先に未空が声を上げた。



「誰が紀田ちゃんだ。それに死ねとも言ってねぇよ」

「じゃあ貼り出さないでよ!恥ずかしくて外歩けないじゃん!」

「成績が悪いのは俺のせいじゃねぇから知らん。恥ずかしい思いしたくなかったら良い点取るんだな。ま、もう手遅れだが」

「嫌だぁあああ!!」

「鬼!悪魔!」

「大魔王!」

「ほお、テメー等も言うようになったじゃねぇか…」



未空に便乗して一部のクラスメイトから非難の声が上がる。
それらを一身に受けてポキポキと指を鳴らす紀田先生を横目に俺は机に両肘をついて頭を抱えた。



「……最悪だ」



未空の言葉を補足するわけじゃないがこれで最下位だったら立ち直れない。
恥ずかしくて外を歩けない気持ちも分かる気がする。



「それと毎回このクラスから赤点取る奴がいるようだが、お前等の成績次第では俺のクビにも関わって来るんだから気合入れてやれよ」

「え、赤点取ったら紀田先生クビになっちゃうの?」

「おっ、何だ立夏。もしかして心配してくれてるのか?」

「そりゃ…」

「本当お前はクソ可愛いな。生徒会なんて辞めて俺の仕事を手伝ってくれよ、小遣いやるからさ」

「可愛くねぇし辞めねぇし小遣いもいらん」

「そうだよ!リカはもう生徒会の一員なんだから誰にもあげないよ!俺のなんだからね!」

「それも違う」

「安心しろ立夏。クビじゃなくてボーナスの間違いだから」

「そこ、一言余計だぞ」



何だ、心配して損した。



「紀田ちゃんの裏切者!俺達よりも金が大事だって言うのかよ!?」

「どうか俺のだけは貼り出さないで下さい!」

「紀田様!紀田大先生様!」

「お願いします!」



俺の心配を余所にクラスメイトからの抗議の声は一向に止まず時折手を合わせて懇願する様子が散見された。
……うん、まさに魔王様と愚民の光景。何か不憫で見てられない。



「貢も…、お前等の気持ち次第では考えないこともないが、まあこれに関しては俺でもどうにもなんねぇから潔く諦めろ」



しかも自分の教え子から集ろうとしてるし。


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