歪んだ月が愛しくて2
昨日の敵は今日の友
立夏Side
「駒鳥、コーヒーのお代わりは如何かな?」
「藤岡くん、お茶菓子を用意したんだけど良かったら食べない?」
「あ、俺のオススメはこれだよ!」
俺のせいで管理人室には変な空気が充満していた。
頼稀は俺に背を向けることで不機嫌な顔を隠して、汐と遊馬はそんな頼稀の様子を窺いながらも俺に気を遣ってくれていた。
でもアゲハだけは違った。アゲハは俺の頭を撫でながら「気にしなくて良いよ」と言って優しく微笑んだ。
「……ごめん。今はいいや」
何がエゴだ。
何が自分のためだ。
結局は俺のせいで振り回されているだけじゃないか。
迷惑掛けてるのは俺。
振り回しているのも俺。
俺が脳天気だから。
自分のことしか考えてないから。
結局、護衛の件はアゲハに言い包められて承諾した形となり、用が済んだ俺は管理人室を後にして自分の部屋の近くまで戻って来た。勿論、護衛役の汐と遊馬のおまけ付きで。
「……あのさ、もうここまででいいよ」
学生棟のエレベーターが3階に着いた時、俺は2人より先にエレベーターを降りてそう言った。
「ダメだよ。まだ部屋に付いてないんだから」
「藤岡くんが部屋に入るのをこの目で確認しないことには俺達も帰れないよ」
そう言って2人はエレベーターを降りて俺を挟むように両サイドを陣取った。
護衛と言うより最早護送だな。
「でも…、2人の部屋ってこの階じゃないよね?」
「いいから、いいから」
「気にしないで」
気にしないわけがない。
でもエレベーターを降りてしまった今、2人に引き返せとは言えなかった。
仕方ない…、と内心溜息を吐いて2人と共に自分の部屋へと向かって歩き出した。
「……2人が護衛してくれるのは分かったけど、結局2人はどこまで知ってるの?」
廊下を歩きながら、俺はずっと気になっていたことを2人に尋ねた。
「どこまでって…」
「藤岡くんの正体は総長から聞いて知ってるよ。そして白夜叉が“B2”にしたことも、白夜叉伝説の最後の日のこともね」
「………」
気まずそうな表情で言葉を選ぶ汐とは反対に、遊馬は平然とした態度でそう言った。
そんな遊馬の言動に、汐は少し怒った様子で遊馬の肩を掴んで制止する。
「おい、遊馬!」
「俺は藤岡くんの質問に答えただけだよ」
「だからって言い方ってもんがあるだろう!」
「変に誤魔化したって意味ないだろう。質問したの藤岡くんの方なんだから」
「そうじゃなくて…っ」
「汐いいよ。遊馬の言ってることは正しいから」
「ふ、藤岡くん…」
「でも勘違いしないでね。俺は別に藤岡くんを責めてるわけじゃない。ただ俺達がどこまで藤岡くんのことを知っているかはっきりさせて置かないと、後々困るのは藤岡くんだと思ったから正直に答えたまでだよ」
「………」
「えっ、え?どう言うことだよ?」
俺と遊馬が視線を逸らさない中、汐だけが俺達を交互に見て頭上に疑問符を浮かべていた。