歪んだ月が愛しくて2
最初は、罪滅ぼしだった。
これも風魔に生まれた宿命で、風魔の跡継ぎである俺の義務だと思っていた。
でも傷付いた羽を背負いながら懸命に生きようとする立夏を見て、立夏の過去に触れて、心の底から笑うことも泣くことも甘えることも出来なくなった立夏を知って、義務なんて言葉じゃ片付けられないくらい気付いたら立夏にのめり込んでいた。
守りたかった。
救いたかった。
根強く絡み付く忌々しい呪縛から、立夏を解放してやりたかった。
でも、立夏はそんなこと望んでいなかった。
『俺は、もう逃げない』
ああ、どうしてお前は他人の手を取ろうとしないんだろうか。
いつもいつも自分でどうにかしようとして、結局傷付くのは自分だと言うのに。
これも全て奴等のせいだ。
立夏を変えたのも、立夏を追い込んだのも、何もかも鏡ノ院のせいだ。
そのせいで立夏は自分のことを蔑ろにして、自分が心を許した者に酷い執着を見せるようになった。
大切な人を守りたい。
もう二度と自分のせいで誰も傷付いて欲しくない。
それが、今の立夏の全てだった。
だから立夏は今も過去に囚われている。
大切な人を守れなかった過去に、心を蝕まれて抜け出せないでいるのだ。
「でも、それは彼の身を案じてのことだろう?」
「……はい」
それだけは揺るぎない真実。
あの頃から変わらない、絶対の誓い。
アゲハさんですら知らない真実が、そこにはある。
「だったら胸を張りたまえ。君は何も間違ってない。何たって君は僕の“影”なんだからね」
「……御意」
ただ一つ変わったのは、立夏以外の存在がどうでも良くなくなってしまったのだ。