歪んだ月が愛しくて2



汐Side





「だって俺の大切な人には、汐と遊馬も入ってるんだもん」



そう言って藤岡くんは俺と遊馬の手をギュッと握った。
お日様のように温かく、パッと花が咲いたような可憐な笑みを浮かべて。



「ふ、じおか、くん…」



あまりの可愛さに握られたままの手が震える。
無意識に開いた口が塞がらない。
心なしか鼻水も垂れて来たような…。



「汐、鼻血」

「ギャー!汐ー!」

「なっ、何じゃこりゃあぁああああ!?」



ポタポタと鼻から垂れる血に驚愕して叫ぶと、すかさず横から遊馬の鉄拳が飛んで来た。



「何だじゃないよ。鼻から汚いもの撒き散らして叫ぶな。藤岡くんに付いたらどうするんだよ」

「え、血付いた!?藤岡くん大丈夫!?」

「それはこっちの台詞だ!今すぐティッシュ詰めろ!」

「ふがっ」



俺の鼻にティッシュを詰める、藤岡くん。
その仕草は少し乱暴だけど、俺のことを心配してくれてるのが伝わって来た。



「あ、りがと…」

「いいから。あんま喋ると血が止まらない」



藤岡くんは優しい。
でも、かつては敵だった人。
まさかあの白夜叉とこんなところで再会して、あろうことか護衛まですることになるとは、あの頃の俺には想像も出来なかったと思う。










◇◇◇◇◇





それを聞かされたのは、俺達が高等部に上がる少し前のことだった。



「白夜叉を、覚えているか?」



頼稀くんはいつも唐突だ。
会話に脈絡と言うものがない。
しかしいつもなら何のこっちゃと思う会話も、今日に限ってはその忌々しい名前に脳味噌が過剰に反応してくれたお陰ですぐに適応することが出来た。



「え、白夜叉って…」

「……あの、白夜叉のことですか?」



忘れるはずがない。

だって奴は俺達“B2”の最大の敵。



「そうだ。もうじき聖学に来る」



今思い返しても鮮明に覚えている。

それは頭を殴られたような衝撃だった。


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