歪んだ月が愛しくて2



あの頃の俺は何も見えていなくて、何も分かっていなかった。

いや、分かろうともしなかった。



当事者じゃないくせに自分勝手に白夜叉を憎んで恨んで、そうすることで心の内に秘めた鬱憤を晴らしていただけだった。





『……守るなんて、大袈裟だよ』



『信用してるわけじゃないから』





でも白夜叉が転入して来て同じクラスになって、少しずつだけど藤岡くんのことを知って、知れば知るほど藤岡くんから目が離せなくなっていた。



仲間のため?


敵討ち?





『俺も、皆のことが知りたい』





………違う。



もう何も知らなかったあの頃には戻れない。



知りたいと思ってしまった。



自分なんかどうでもいいみたいな達観した目も、一見人当たりが良さそうに見えて実は全身薔薇みたいに刺々しい彼自身も、藤岡立夏と言う存在そのものが気になって気になって仕方なかった。



そう思った時点で俺の負けで、気付けば俺は…。



「もう大丈夫?血止まった?」



いつの間にか白夜叉じゃない、藤岡立夏に惹かれていたんだ。



「……汐?」



不意に藤岡くんの顔がグッと近付けて、下から俺の顔を覗き込む。



「ふ、藤岡くん!そんな可愛い顔するとまた…ぐはっ!」

「汐ぉぉおおお!?」

「バカ」



ああ、どうせ俺はバカだよ。
藤岡くんの可愛さにコロッと撃沈するような大バカさ。
でもこれも全て藤岡くんが可愛過ぎるのがいけないんだ。
何もしなくても可愛いのに、加えて上目遣いなんて破壊力あり過ぎだろう。



「へーき?」



だから何で首を傾げただけでそんなに可愛いんだよ!


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