歪んだ月が愛しくて2
「名字だと四文字+くん付けで長くない?名前なら三文字だし短くて楽でしょう?」
「確かに」
「で、でも藤岡くんを名前で、しかも呼び捨てにするなんて…っ!」
心臓がいくつあっても足りねぇよ!
「それにこれから俺の護衛をしてくれるんでしょう。俺的には2人ともっと仲良くなりたいんだけど」
「ぐはぁぁあああっ!!」
「汐ー!?」
「はぁ…」
ヤバい、……ヤバいヤバいヤバいッ!!
マジで可愛い。可愛過ぎる。
こんな可愛い藤岡くんを名前で呼べるなんてこれまでにないチャン…じゃなくて、グッと距離が縮まってこれまで以上に仲良くなれ…でもなくて!
「あ、でも呼び辛かったら今のままでも…「呼びたい!」
あ…、と思った時には既に遅かった。
「い、いや、そのー…」
「最初からそう言えばいいのに」
遊馬の小言に反論することも忘れて自分の発言に後悔していると、そんな俺に向かって藤岡くんが一歩足を踏み出した。
「何を躊躇ってるのか知らないけど、俺は汐に名前で呼んで欲しいよ」
「え、」
また一歩、彼が歩み寄って来る。
反対に俺の身体は金縛りにあったかのように動けなかった。
「呼んでよ、俺の名前」
「っ!?」
凛として、甘さを含んだ声に頭の芯が痺れた。
……堪らなくなった。
呼びたい。
彼の、愛しい人の名前を。
「り、か…」
心臓が飛び出そうなくらい緊張する。
だって目の前には大好きな藤岡くんがいて、大好きな人の名前を呼んでるんだから。
「よし!」
「っ、」
ふわりと、深く微笑んだ。
人は「心が震える」とか「心が揺さぶられる」とか言うけど、その例えが分からなかった。
でも分かった。
それが、今この瞬間だ。