歪んだ月が愛しくて2



『このバカ!何考えてんだ!復讐なんてバカげてる!』

「バカげてる?」

『そうだ!そんなことをしてアイツが喜ぶとでも思ってるのか!?』

「、……関係ない」

『何?』

「公平は関係ない。これは俺の問題だ」

『………』



一瞬、言葉に詰まった。



文月さんめ、分かってて言ったな…。
あえて公平の名前を出すことで俺に考えを改めさせようとしたんだろうが生憎これは俺の問題だ。
公平は関係ない…、って胸を張って言えたら良かったんだけど。



『……お前が負けるとは思ってない。ただ相手が悪過ぎると言ってるんだ。もっと冷静になって考えろ』

「文月さんこそ冷静になれば?珍しく早口だけど」

『話を逸らすな。こっちはお前のことを心配して言ってるんだぞ」

「心配?」

『……悪いか?』

「キモ」

『あ?』

「珍しく素直だけどどうしたの?頭でも打った?」

『お前な…』

「―――“大丈夫”」



文月さんの言葉を遮って魔法の言葉を唱える。



「俺こう見えても結構冷静だから。文月さんが心配することなんて何もないよ」



ヤエのお陰で何とか表面上は保っていられるが、その言葉とは裏腹に内側から溢れ出すドス黒い感情に眩暈がした。
制御出来ない何かはどんどん膨れ上がる。
毎夜見る悪夢が現実まで侵蝕しているかのようなに錯覚する。



(クソッ)



ドンッと、ドス黒い感情に抗うように壁を叩く。



決めたじゃないか、もうあの日を繰り返さないって。

もう誰も傷付けさせない。誰も巻き込みたくない。

そのためには自分で全て背負ってどうにかするしかない。

背負うことを、償うことを決めたのは俺だ。



「自分のケツは自分で拭く」



……抗え。



見失うな。



(俺は、藤岡立夏だ…)



甘ったれるな、クソ野郎。



『……何が心配することないだ。前科者のくせに』

「はいはい、悪うござい…、」

「俺の有り難いHRよりも愛しの文月との電話の方が楽しいみたいだな」



突然、俺のスマートフォンが横から奪われた。
気付くことが遅れたその気配に誰かと思い咄嗟に顔を上げると、そこには“B2”の初代総長様が俺のスマートフォンを片手に悪戯っ子みたいな笑みを浮かべていた。



「き、紀田先生?どうして…」

「どうしてじゃねぇよ。とっくにHRの時間過ぎてんぞ」

「え、もうそんな時間?」

「とっとと教室入れ。出席取れねぇだろうが」

「はい。あのスマホは…」

「これは没収」

「は?」

「すぐ返してやるよ。用が済んだらな」

「用?」

「心配すんな、悪いようにはしねぇから。お前は先に教室入ってろ」

「………」



紀田先生は俺のスマートフォンを耳に当ててニヤリと笑みを浮かべる。
文月さんと話したいのは分かったがだったら自分のスマホを使ってくれ。
釈然としない気持ちを抱えたまま俺は未空達が待つ教室へと戻った。


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