歪んだ月が愛しくて2



「……うん、流石だね」

「予想通りだけどな」



やっぱり会長と九澄先輩は頭が良かった。
生徒会室でも全然勉強してなかったのに理不尽だ。



それにアゲハも。



「アゲハって頭良かったんだ…」

「あれで頭悪かったらマズいだろう、色々と」

「確かに」



あれで頭まで悪かったら見た目も中身もバカって言ってるようなものだ。



「次はアゲハに勉強教えてもらおうかな」

「何だ、俺達だけじゃ役不足だったか?」

「あ、ごめん。そう言う意味じゃなくて…」

「分かってる。冗談だ。でもそれはアゲハさんの前で言わない方がお前のためだぞ」

「何で?」

「お前に頼られたらあの人はそりゃもう凄い勢いで首を縦に振って快諾するだろうよ。でもな、確かにあの人は頭は良いが、他人に教えるのは壊滅的に下手だからな。次も赤点を取りたくなければ俺を頼った方が賢明だぞ」

「お世話になります」

「おう」



ポンッと、頼稀の手が俺の頭に置かれる。
俺の選択に気を良くしたのか、頼稀の表情は珍しく機嫌が良さそうに見えた。
どうやら俺の選択は間違っていなかったようだ。
ただ一つ、そんな俺と頼稀の会話に終始耳を傾けていた会長が心底面白くなさそうに舌打ちをしたこと以外は。


そんな会長の変化に俺が気付けるはずもなく、俺は会長から離れて陽嗣先輩の隣に立った。



だって納得出来ない。



「全然ヤマ外してないじゃん!」



それは陽嗣先輩の成績についてだ。



「えー、外してんじゃん。俺トップ10狙ってたのに」

「トップ10!?」



俺なんてギリギリ二桁なんですけど!?



「……詐欺だ」



人は見掛けによらないって本当だったんだ。



「悪かったな、詐欺で」

「チャラ男キャラって普通頭悪いんじゃないんですか?」

「誰がチャラ男だよ」



いや、見たまんまでしょう。



「リカ、陽嗣なんて構っちゃダメ!言ってることも信じちゃダメだよ!妊娠しちゃうからね!」

「に、妊娠…?」

「聞くな。耳塞いどけ」

「コラッ!オメー等が言うとマジに聞こえんだろうが!りっちゃんに勘違いされたらどうしてくれんだよ!」

「勘違いじゃなくて本当のことだろう!さっきリカの耳にキスしたこと忘れてねぇからな!」

「僻んでんじゃねぇよ猿!悔しかったらオメーもすりゃいいだろうが!」

「しねぇよ!リカがいいって言うまで我慢するもんね!」

「ハッ、いつんなったらお許しが出ることやら」

「だってそれで突っ走ってリカに嫌われたら元も子もねぇじゃん」

「いつからそんなお利口になったんだよ。てか、この前りっちゃんにキスしたって言ってなかったか?」

「あ、あれは…っ」

「はいはい、2人共そこまでにして下さい。悪目立ちはしたくありませんからね」



九澄先輩の言葉に未空と陽嗣先輩が渋々従う。
するとその横で頼稀は誰もが忘れていた事実をさらっと口にした。



「で、罰ゲームは?」

「……あ」



刹那、視界の端で真っ青な顔の汐とニヤリと妖艶に微笑むみっちゃんが見えた。
その黒い笑顔を見て確信した。みっちゃんは機会を窺っていただけで罰ゲームのことを忘れていなかったんだと。



みっちゃんの考えた罰ゲームは至ってシンプルなものだった。
グラウンドの真ん中で校歌を熱唱し、更にそれを全校放送で流したのだ。
汐は幼稚舎から聖学に通っているだけあって歌詞は完璧に覚えていたが、何せ聞くに堪えないほどの酷い音痴である意味驚かされた。



「こ、これは…」

「ね、聞くに堪えないでしょう」

「相変わらず酷いね」

「耳痛ぇ」

「フン、C組の平均点下げたんだからこれくらいしてもらわないとね」

「「「「「「(鬼だ…)」」」」」」



この光景にみっちゃんは至極ご満悦な様子だった。
汐が音痴だと知っていてこの罰ゲームにしたかと思うと、改めてみっちゃんに逆らってはいけないと思い知らされた。


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