歪んだ月が愛しくて2

2人目の特例




暦は6月となり、例年より遅い梅雨が訪れた。
そんな雨とジメジメした湿気を払拭するかのように、クラスは体育祭モードに突入した。



「そんなわけで体育祭の種目決めんぞ」



紀田先生は教卓の前に立ち、その後ろでは葵とみっちゃんが黒板に体育祭の種目を書き連ねる。



「はーい、紀田ちゃんに質問でーす」

「誰が紀田ちゃんだ。紀田大先生様だって言ってんだろうが。一度で覚えろ」

「このやり取りも何回目だよ…」

「もういいじゃん。紀田ちゃんは紀田ちゃんなんだからさ」

「良かねぇよ。俺は先生様、お前等は生徒。お分かり?」

「紀田ちゃん、体育祭の種目って1人何種目までだっけ?今年もパン食い競争ってある?」

「ムカデもやりたいな」

「二人三脚も」

「聞けやコラ」



額に青筋を立てる紀田先生を余所に、未空と希は相変わらずのマイペースっぷりを発揮して次々と質問を続ける。
でもそれを許さない女王様は、ドス黒いオーラを放出させながら未空に向かってチョークを投げ付けた。



「わっ!みっちゃん危ないよ!」

「煩い!うざい!マジでうざい!お前のせいで話が脱線してるのが分かんないのか!?お前の幼稚なお頭でも分かるように、この僕が直々に説明してやるからちょっと黙ってろ!」

「何で俺だけ!?のんちゃんは!?」

「く、邦光くん落ち着いて!チョークは投げちゃダメだよ!」

「止めるな武藤!今日と言う今日は絶対に許さない!息の根止めてやる!」

「それは止めないでー!」

「どうどう」

「僕は牛じゃない!」



どっちもどっちだな。


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