歪んだ月が愛しくて2
尊Side
月が眩しい。
月明かりがカーテンの隙間から差し込む夜は、何故か感情が昂ぶって中々寝付けない。
そんな夜は陽嗣に誘われるがまま夜の街に繰り出していた。
「あれ?ユキ?」
「お、ユキじゃん!久しぶりだな!」
「キャー!タケルくんもいるぅ!」
「タケルくん久しぶり!あたしのこと覚えてる?」
「ちょっと、何抜け駆けしてんのよ!タケルくんがアンタのことなんて覚えてるわけないじゃん!」
「何ですって!?アンタ何様のつもりよ!」
「そっちこそ!タケルくんの彼女面してんじゃないわよ!」
「それはアンタの方でしょう!」
時刻は既に深夜1時を回っていた。
俺と陽嗣は学園を抜け出して、それぞれの単車で東都の双児区まで訪れていた。
気分転換の名目で陽嗣に連れて来られたのは、以前入り浸っていたナイトクラブだった。
店内に入った途端、思考を割くような喧しいBGMに一瞬だけ顔を顰めたが、店内の仄暗い照明がそんな俺の表情を隠してくれた。
すると俺等の存在に気付いたスタッフの1人が馴れ馴れしく話し掛けて来たことでフロアにいた客達が一斉に群がって来た。
「はーい、可愛い子ちゃん達おっひさー。後でそっち顔出すから悪いけど今はそこ通してねぇ」
「野郎共も久しぶりだな」と付け加えて、陽嗣は慣れた様子で店内を進んで行く。
「相変わらずモテモテですね、タケルくん」
「煩ぇよ」
陽嗣の後に続いて奥の方へと足を進めると、前方から陽嗣の冷やかしの声が降って来た。
「てか、お前がタケルって顔か〜?」
「どんな顔だよ」
別に好きでそう呼ばれてるわけじゃない。
「タケル」と名乗っているのは、後々面倒臭ぇことにならないための予防策だ。
探られて痛い腹はないが、神代財閥次期後継者の肩書きは中々鬱陶しいものがある。
それは陽嗣も同じだった。だからこんなおちゃらけてる陽嗣でも、外では「ユキ」と名乗って素性を隠していた。