歪んだ月が愛しくて2



「ユキとタケルくんだ!久しぶり!」

「何ヶ月ぶり?ずっと待ってたんだからね!」



俺等が奥のブースに座ると、派手な化粧に露出の高い服を着た2人組の女が近付いて来た。



「俺も会いたかったぜ」



陽嗣は近付いて来た女達の肩を抱き寄せて耳元で囁く。



「本当〜?」

「リップサービスとか嫌だからね」

「俺が可愛い子ちゃんに嘘吐くわけないでしょう」



そう言って陽嗣は胡散臭い笑みを浮かべながら女達の頬にキスをした。



「じゃあ今夜どう?」

「んー、どうしよっかな」

「久々にユキとシたいなぁ。ねぇ、いいでしょう?」

「……そうだな。俺も最近忙しくてご無沙汰だったから溜まってんだわ」

「うふふっ、決まりね」



すると女の1人が陽嗣から離れて俺の腕に自身の胸を押し付けて来た。



「タケルくんは〜?」

「………気が向いたら行く」

「本当!?タケルくんに抱いてもらえるなんて嬉しい!あたし、一度でいいからタケルくんに抱いてもらいたかったの!」

「どうでもいいから離れろ。邪魔だ」

「そんなクールなところも堪らないなぁ。じゃあこれ、タケルくんどーぞ」

「ユキも、はい」



名前も知らない女から手渡されたグラスを明かりに透かして見る。
一見普通の酒に見えるが、何が混ざってるか分からないものを無闇に口を付けることはしない。
すると俺の隣に来た女はニコニコしながら白い錠剤が乗った舌をチラッと見せ付けた。



「待ってるね」



女達はヒラヒラと手を振りながら奥の部屋へと消えて行く。
陽嗣は女達の姿が見えなくなった途端、手渡されたグラスをカウンターまで下げて新しいグラスを持って来た。



「相変わらずだな」



このクラブの奥にはいくつかの部屋がある。
そこがよく乱交に使われてるのは知っていた。その連中の殆どが薬を使って行為に及んでいることも。
さっきの女達みたいにキマッた奴を何人か誘ってしけ込むと言った手順は、初めてここに連れて来られた時に陽嗣から聞かされていた。
そして行為に及んだ後、客に薬を売りつけ、ユーザーを増やし利益を上げることで私腹を肥やすのが奥にいる連中のやり方なんだろう。



「クラブなんてそんなもんだろう。客が新しい客を連れて来てくれるんだから店側だって見て見ぬふりさ。正に犯罪の温床だな」

「お前もか?」

「まっさか。俺は薬には手を出さない主義なの。可愛い子ちゃんには手出すけどな」

「どこのエロオヤジだ」

「失敬な。それに俺の立場でそんなことしたらお前の名前に傷を付けちまうことになるからな」

「今更だな」

「まあ、過去のことを蒸し返されちゃ何も言えねぇけどよ、あっちはちゃんと足洗って綺麗にして来たんだ。今の俺はお前の忠実な家来だぜ。だからあの尻軽共の誘いにも乗ったフリしてやったんだ、お前の汚点にはなりたくねぇからな」

「……確かに、それに関しちゃ利口だな」



どこまで先を見据えているのか知らないが、一夜限りだとしても何れパクられる可能性のある女と関係を持ったところで何の特にもならない。百害あって一利なしだ。
いくら相手が女なら誰でもいいからってその辺のところは見極めているつもりだ。例えその後ろめたい部分を闇に葬ることが出来たとしても用心するに越したことはない。


< 251 / 651 >

この作品をシェア

pagetop