歪んだ月が愛しくて2
「……ごめん、迷惑掛けて」
「そんなことが聞きたいんじゃねぇよ。俺様はな…」
「でもやめない」
「リツっ!」
「俺だってあっちが仕掛けて来なかったら復讐なんて考えなかったよ。でも奴等は俺の大切なものを…、公平を利用して、傷付けて、最後には虫けらのように切り捨てた」
『…ごめん、シロ……』
「ボロボロに、した…」
ギュッと、無意識に拳に力が入る。
「その上、葵の友達まで…」
「武藤の友達が巻き込まれたのはお前のせいじゃねぇだろう」
「俺のせいじゃなかったら誰のせいだって言うんだよ!俺が白夜叉だから…っ、俺が生きてるから…」
「リツ!」
文月さんは俺の名前を呼んだと同時に俺の身体を力強く抱き締めた。
咄嗟のことに驚いた俺は反応が遅れて文月さんの両腕にすっぽり納まってしまった。
「それ以上言うな」
文月さんの声が頭上から聞こえる。
「あれは、お前のせいじゃない」
その声は少し怒っていた。
でも俺の頭を撫でる仕草はあの頃のまま優しかった。
「お前のせいじゃない」
文月さんは何度も何度も同じ言葉を繰り返す。
まるで聞き分けのない子供に言い聞かせるかのように、ただひたすらに俺の頭や背中を撫でて落ち着かせようとしていた。
でも、やっぱり俺は聞き分けのない子供みたいで、文月さんの優しさに触れる度に卑屈な自分が顔を出す。
「葵には、俺と同じ想いを、させたくなかったのに…」
涙は出ない。
俺のせいで葵の心を傷付けたのになんて薄情なんだろう。
「……ごめん」
相手がいない謝罪なんて意味がない。
でも謝罪せずにはいられなかった。
「ごめん…っ」
文月さんの胸に頭を押し付けて声を殺す。
そんな俺を文月さんは何も聞かずに、ギュッと力強く抱き締めてくれた。