歪んだ月が愛しくて2
「足元がスースーする…」
「下履いてねぇからな」
「下って、まさか…っ」
「下着」
「嘘!?」
「嘘」
「ア、アンタな…、他人事だと思って面白がってるだろう!」
「お前が予想以上に面白い反応してくれるからな」
「性格悪過ぎ!知ってたけど!」
「ご安心下さい。立夏様の下着もちゃんと私が…」
「やめてー!それ以上は聞きたくなーい!」
「だから俺様がやるって言ったんだよ」
「いや、それも無理」
「何でだよ!?」
それから俺はオムライスを食べ終えて哀さんが用意してくれた新品の制服に着替えた。
俺が文月さんと哀さんの目の前でパンツ一丁の姿になると、文月さんは目を丸くさせて驚いたかと思えば「ここで着替えるなっ」と怒鳴られた。
何で怒られたのか分からなくて終始無視していると。
「おい、無視してんじゃねぇよ。着替えるなら隣の部屋行けって」
「何で?」
「何でじゃねぇよ。ここには哀もいるだろうが」
「私は気にしませんが」
「お前が気にしなくても俺様が気になるんだよ」
「哀さんがいいなら別にいいじゃん。どうせ哀さんにはもう全部見られてるんだし」
「開き直ってんじゃねぇよ」
開き直りたくもなるさ。
女性の哀さんに上だけじゃなく下着まで着替えさせてもらってたなんて男として終わったようなものだ。
まあ、過ぎたことをグチグチ言っても仕方ないけど。
俺が着替え終わった頃には文月さんの不機嫌度がピークに達しそうになっていた。
その証拠に溢れんばかりのキャスターの吸殻が灰皿に溜まっていた。
「……吸い過ぎ」
どっかの誰かさんみたい。
ふと脳裏に過ぎったのは太陽の彼。
俺の名前を呼んだあの人の顔が忘れられない。
「着替え終わったならそこに座れ」
「え、何で…」
「こっちにはまだ聞きたいことが山ほどあんだよ」
……あ、何か、嫌な予感がする。
これは…、まさかさっきの続きとか?
「昨日何があった?」
はい、的中。やっぱり直球で来たか。
うん、分かってたよ。文月さんが俺相手に気を遣って遠回しに聞いて来るはずないよね。分かってたけどもう少し話し易い雰囲気を作ってくれてもいいんじゃない。これじゃあ話したくても中々切り出せないじゃん。
まあ、出来ることなら話したくはないけどね。
「“鬼”と接触した以外にも何かあったんじゃねぇのか?」
「………」
「都合が悪くなると黙りか。お前のそう言うところは本当ガキの頃から全然変わんねぇな」
「喧嘩売ってんの?」
「文句があるならとっとと吐け」
「あったような、なかったような…」
「早く言え」
ジロッと目を細めて疑いの眼差しを向ける、文月さん。
「はぁ…」
これは言うまで逃がしてくれそうにないな。