歪んだ月が愛しくて2
「神代に見られた、だと…」
「……多分」
俺は昨日何があったか、誰に会ったか、誤魔化すことなくありのままに話した。
それは頼稀にも話していないことだった。
「何でお前は…っ、今更言っても仕方ねぇが…。全く面倒な奴にバレやがって…」
そう言って文月さんはソファーに座ったまま頭を抱えて項垂れた。
「でも、まだバレたかどうか分かんないし…」
「バレたに決まってんだろうが。名前まで呼ばれてんだから」
ですよね。
俺もそう思うわ。
「しかも昨日のお前は今のお前じゃなかったんだろう?」
「………」
文月さんは格好のことだけを言っているんじゃない。
俺が暴走したせいで、またあの目になったことを責めているんだ。
でも目に関しては仕方ない。だって自分の意思ではどうすることも出来ないのだから。
「……アンタに、迷惑掛けるつもりはないよ」
会長に見られたと言うことは俺の正体に気付くのも時間の問題だ。
初めから正体がバレたらここにはいられないと思っていたが、まさかこんなに早くバレるとは思わなかった。
(覚悟、しないとな…)
覚悟なんて、当の昔にしたつもりでいた。
でも、やっぱり。
「……やけに潔いな」
「別に、普通だけど」
「まさかと思うが、辞める気じゃねぇだろうな?」
「………」
「リツ、答えろ」
答えろ、なんて白々しい。
「リツ」
でも、どうやら俺の口から言わせたいらしい。
「……だとしたら?」
「させるかよ」
だったら聞くな、と内心思った。
文月さんは分かってるんだ。
俺の考えも、俺の答えも。
「辞めるのは許さねぇ。勿論、勝手にいなくなるのもだ」
「……昔のことを持ち出すなよ」
「一度で覚えねぇバカのために何度だって言ってやる。ここを出て行くことは許さない、絶対に」
「………」
でも約束は出来ない。
だって、ずっと前から決めていたことだから。
俺の正体を知られたら、俺はもうここにはいられない。
この学園からも、文月さんの前からも、そして新たに出会った彼等とも。
「兎に角、お前は神代に何言われてもしらばくれろ。絶対に認めんなよ」
「そのつもりだけど…」
認める認めないの前にもうバレてるんだって。